第6回生きものフォーラムの記録

 

 

 

日 時:令和元年10月16日(水)13:00~16:30

 

場 所:埼玉会館7B会議室

 

テーマ:県民参加生きもの調査結果をどう活かすか

 

 

 

1 挨拶 脇坂代表理事

 

 毎年30数団体が参加し10年間続いた県民モニタリング調査が終了した。調査による記録が残ったが、今後は県民への広報や学術的研究に活用していく必要がある。また種類を絞り込んでも良いので、今後の調査につなげて行く方策を考えたい。

 

 

 

2 来賓挨拶 埼玉県環境部みどり自然課 島田課長

 

 県民の皆様に動植物の実態を知ってもらうため、2009年から県民モニタリング調査を行ってきた。これは大きな成果であり、データを今後の自然保護行政に活かしていくと共に、生物多様性新県戦略に基づき生物多様性への理解を県民に求めていきたい。

 

 

 

3 基調講演 (公財)日本自然保護協会 福田真由子 氏

 

 日本自然保護協会(NACS-J)に入って11年目。本日は、「生物多様性とその現状」「市民調査の大切さ」「モニ1000里地調査の取り組み」「各地の成果活用の取り組み」についてご紹介する。マルハナバチは巣づくりにネズミの古巣を使うなど、生きものが生きるためには生きもの同士のつながりが必要。身近な生物種が私たちの資源であり、宝庫でもある。絶滅のおそれのある野生生物の割合は、両生類、爬虫類、淡水魚で高い。モニタリング調査を人にたとえると定期健康診断である。NACS-J2008年から全国約200ヶ所の里山で調査を開始し、コアサイトでは長期的(100)、総合的に一般サイトでは短期的(5年ごと)、部分的に調査を行っている。調査サイトは徐々に増えている。調査結果は、生物多様性指標レポートとして毎年発行している。水辺や移行帯では水環境の悪化が懸念される。身近な鳥では、スズメ、ヒヨドリ、シジュウカラ、ウグイスなどが減少傾向を示している。大阪ガスの中池見湿地埋立に対する反対運動に関して、コンサルの調査後であったが、市民調査データをラムサール条約へ提出したことがラムサール湿地として登録される根拠となった。

 

<まとめ>

 

・保全施策を指標の改良に結びつける。

 

・多くの研究者と協力体制をとる。

 

・地理的サイトの配置改善(東北地方のデータは少ない)。

 

・調査員の確保。

 

・結果の解析、事例共有。

 

 

 

4 基調報告 NPO法人 自然観察指導員埼玉 牧野彰吾 副代表

 

 3年間の外来生物調査の調査地は全837メッシュで、亜高山帯1、山地1、低山帯21、丘陵・台地・低地814であった。ウシガエルは西部にあまりいない。緊急対策外来種、重点対策外来種、その他の総合対策外来種、産業管理外来種は河川敷で多く確認された。外来種侵入被害の実態の把握が重要。外来種は雑木林にはほとんど入って来ない。林縁で待っている。朝霞地区のナルトサワギクは保全活動で防除されている。道路の分離帯では、ススキセイバンモロコシシナダレスズメガヤに変わってきている。クズアレチウリ、セイヨウカラシナセイヨウアブラナ、カントウタンポポセイヨウタンポポアイノコタンポポニセカントウタンポポという傾向が見られる。コセンダングサは圧倒的である。

 

 

 

5 事例報告

 

  1. NPO法人 絶滅危惧植物種調査団 三上忠仁氏

 

  ・希少種調査、社会教育など、植物調査団の活動内容の紹介

 

  ・県モニについては、調査の手薄なメッシュを補足するように実施した。

 

  1. NPO法人 エコシティ志木 天田代眞代表

 

  ・エコシティ志木の主な活動の紹介。

 

  ・県モニについては、初期にはホンドカヤネズミ、カダヤシなど実施していた。

 

  ・調査も生かし、オオブタクサの除去やいきもの図鑑の発行も実施  

 

  1. NPO法人 いろいろ生きものネット埼玉 茂木守氏

 

  ・調査ルートを記録に残すこと、調査のないメッシュを埋めることに留意した。

 

  ・キク科とイネ科の判別、幼葉の判別などは難しい。

 

  ・動物にはほとんど遭遇しない。糞、足跡、営巣、脱皮殻など生活痕の例示が必要

 

  ・調査手法には調査地点の偏りの解消、同定の正確性など様々な課題がある。

 

・対策の実施に結び付けるにも科学的根拠、優先順位意識の醸成など同様である。

 

 

 

6 フロアディスカッション コーディネーター NPO法人いろいろ生きものネット埼玉 星野監事

 

・モニタリングの報告件数ではなく、違う指標が必要ではないか?

 

 牧野氏:県モニは均一な調査ではない。公平性や正確性にやや欠ける。しかし、あまり厳しくやると参加者が嫌になる可能性があった。得られたデータの解釈を同じ団体ではなく、別の人が別の分析をやるのも必要。

 

・課題ではあるが、データ処理に工夫が必要。地域区分、種を含めて有効に。

 

 牧野氏:有無だけではなく、群落、成長段階も調べた。地球温暖化の影響が次は現れるかも知れない。もう1回調査が行われれば比較できる。

 

 島田課長:行政はホームページで地域の保全状況を掲載。県民の問い合わせ活用している。久喜市の議会でアメリカオニアザミに関する問い合わせがあり、みどり自然課で答えた。CESSとクビアカツヤカミキリ対策にも活かせる。

 

 天田氏:1メッシュは1回調査、志木地区はすぐ終わる。自分たちの活動の中では全県的なデータを活かす所まではいっていない。

 

・継続調査の課題

 

 嶋田氏:研究者としても活用したい。市民科学として研究者だけではなく、地域の市民調査でより詳細な情報を残すことは有用。調査指標を研究者が作っていくことも考える。

 

 福田氏:市民のネットワークの成果。啓発パンフレット、ネットワーク化、地域活動。市民による駆除、市や県など行政の対策をお願いするに当たり根拠、危険度を示す。

 

 石井氏:CESSのクビアカツヤカミキリは、環境省、ウェブ上でやると助かる。風評被害、生きものログに投入できないか。特殊な外来生物は速報性が必要。いつどう公開するかが防除に重要。

 

 三輪氏:速報性は遅れているかも知れない。解析、プロットしきれていない。できるだけ早く公開するようにやっていく。

 

 三上氏:クビアカツヤカミキリの発生実態はもっと宣伝したらよい。

 

 嶋田氏:クビアカツヤカミキリ対策として今年新たに浸透性農薬が出てきた。